2024年度活動レポート

チーム美らサンゴは、2004年より活動を開始し、2024年に活動20周年を迎えました。これまでに4,652名が参加、19,532本のサンゴを植え付けました。

しかし、2024年7月ごろから沖縄本島周辺でサンゴ白化の報告が相次ぎ、チーム美らサンゴの植え付けエリアでもある恩納村万座湾周辺でも8月後半~9月後半にかけて白化現象が発生、チームがこれまでに経験したことの無い大規模な白化となりました。白化までの経緯や現在の様子などをレポートします。

2024年の植え付け状況

対象者 参加者 本数 植え付け場所
ダイバー 130 93 二つ岩手前
ノンダイバー 95 二つ岩手前
植え付け代行
225 93

サンゴの産卵状況(2024年5月)

2024年は、5月23日ごろからサンゴの産卵が確認され始め、5月25日の産卵イベントではミドリイシ(アクロポーラバランヤンネシ)の産卵を参加者全員で観察しました。

1.白化までの経緯

沖縄本島北部の海面水温(青線が2024年)は、6月末から急激に上昇し、7月から9月上旬まで30℃を超える高水温が続きました。
[気象庁 「沿岸域の海面水温情報 沖縄本島北」
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/series/engan/engan703.html 2025.3.21閲覧]
2024年の7月~9月の海面水温は、過去5年の最高値や平年値と比べても、極めて高いことが分かります。

[気象庁 「沿岸域の海面水温情報 沖縄本島北」より抜粋
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/series/engan/engan703.html]

上記、海面水温の高温による影響等で沖縄本島周辺では7月頃からサンゴ白化の報告が各地で相次ぎ、チーム美らサンゴの植え付け場所でもある恩納村万座湾内では他エリアより遅く 8月後半から9月前半頃に白化現象が見られました。
水深2~3mと浅く湾内という地形の特性上、高水温の海水が留まってしまったこと、7~9月に台風の直撃が無かったことで白化の被害は大きく、湾内の多くのサンゴは9月前半頃から白化(瀕死状態)その後、死滅し藻で覆われ茶色から黒っぽく変化してしまいました。

2.現在の万座湾内サンゴの様子

万座湾内のサンゴのモニタリング写真の一部を公開します。

(左)モニタリングI地点(2023年11月)
(右)モニタリングI地点(2024年12月)

大変残念ですが、モニタリング写真を撮っていた地点のサンゴは全滅に近い状況となってしまいました。
その他の地点についてはサンゴ最新状況をご確認ください。

一方、沖合のダイビングスポットの水深3~10mで生きているサンゴ被度は26~37%となりました。(リーフチェック結果より抜粋)
前年に比べ40~60%減となり、白化による影響は広範囲で確認されましたが、湾内のサンゴ 被度に比べ生存率が高いことが確認できました。
サンゴ植付け活動を初めて20年以上になりますが、その間、ここまで大規模な白化はありませんでした。

3.2024年の気温および海面水温が高温となった要因

2025年1月6日沖縄気象台より、2024年の沖縄地方の地域平均気温の平年差は、+1℃、1998年以来の記録更新かつ、統計を開始した1946年以降で最も高くなったとの報道発表がありました。

沖縄気象台 2025年1月6日報道発表  「2024 年の沖縄地方の平均気温は過去最高を記録」より表抜粋

1998年に世界各地で発生したサンゴの大規模な白化現象がきっかけとなり、チーム美らサンゴが発足しました。活動開始から20年を迎え、これまでも何度か訪れた白化の危機を乗り越えて、世界にも誇れるサンゴの海が戻っていました。
しかし状況は一転、2024年は厳しい海洋熱波の年となり、再びサンゴの大規模な白化現象が発生しました。
2024年は高気圧に覆われた期間が長く、
①強い日射が海面に降り注いだこと、
②台風もなく平年よりも風が弱い日が続き、かき混ぜ等による水温低下の効果が弱かったこと
が主な要因と考えられています。
また、この記録的な高温の背景としては、春まで続いたエルニーニョ現象が地球規模での中緯度帯の高温の持続につながったことに加え、地球温暖化が影響したと考察されています。

4.1998年と2024年の白化現象の違い

1998年の白化現象は、水深が5mより深いエリアでも多くの被害が出ていました。一方2024年は、海面水温は歴代1位を更新した厳しい環境でしたが、幸いにも水深5m以内の浅瀬の被害がほとんどで、深いエリアのサンゴは生き残ることが出来ました。

「死滅したサンゴの中にひとつの希望」
今回、黒く死滅したサンゴの中に埋もれるように生き残ったサンゴが発見されました。
大半が死滅している中、ところどころに懸命に生きているサンゴは、宝物のように輝いて見えたそうです。救い出したサンゴは、DNA解析が行われ、また、親サンゴとして育成が再開されました。これらのサンゴは、高温に対する耐性を持っている可能性があり、将来へのひとつの希望と考えています。
そして何より、一番大きな違いはチームの協力者である恩納村漁業協同組合が20年以上培ってきたサンゴ育成の豊富な経験があることです。
1998年当時は、何もないところから手探りで植え付けという未知の領域に挑戦してきました。幾度の失敗を乗り越えて、現在の植え付け技術が確立されました。2024年、いまは安定して育成出来るスキルがあります。

5.これから我々に何が出来るのか

サンゴがいない海は、濁りやすく自然のサンゴが着床しにくい環境になってしまいます。人の手が入ることで、自然に回復するよりも早く、サンゴの海を取り戻すことが出来ることを経験してきました。
チーム美らサンゴでは、20年以上かけて培ってきたサンゴ育成技術を活かし、引き続き、サンゴモニタリングによる観察と記録、生き残った親サンゴを守り、恩納村のサンゴの回復を手助けしていきたいと思っています。

もう一度あの美ら海を取り戻すため、皆様のご協力をお願い申し上げます。

歴代の植付け状況

回数 人数 本数
ダイバー ノンダイバー 植えつけ 寄付等
2004年 7 243 0 252 391 - 391
2005年 8 154 0 154 154 - 154
2006年 10 188 36 224 224 - 224
2007年 11 285 94 379 285 - 285
2008年 4 190 42 232 217 - 217
2009年 8 95 64 159 229 - 229
2010年 5 107 178 285 243 - 243
2011年 4 124 35 159 374 - 374
2012年 4 117 64 181 316 - 316
2013年 4 128 61 189 317 475 792
2014年 4 123 44 167 290 817 1,107
2015年 4 145 143 288 440 830 1,270
2016年 4 140 140 280 420 854 1,274
2017年 5 170 88 258 408 1,622 2,030
2018年 4 155 133 288 405 1,681 2,086
2019年 6 192 125 317 473 1,680 2,153
2020年 2 75 32 107 457 1,830 2,287
2021年 1 39 16 55 94 580 674
2022年 7 161 55 216 333 1,400 1,733
2023年 5 161 95 256 340 1,260 1,600
2024年 5 130 89 219 93
111 3,118 1,534 4,652 6,503 13,029 19,439